こちらは山間の集落を抜けたところに鎮座される古社です。
参道にあたるであろう山道脇から左手に続く細い道を進んで行くと、やがて雑木で囲われた境内の中に拝殿と思しき建屋が姿を現す。
鳥居はもちろん狛犬の姿もない境内には、風化が進む風通しのよい瓦葺きの建屋の裏に新しい本殿覆屋が建立され、頑丈そうな南京錠が掛かるその中では一対の肥前狛犬が本殿を守護しています。
社頭。
こちらの神社だけではなく、こういう開放的な造りの拝殿は概ねどこでも傷みがひどいようです。やはり四方から雨風が吹き込むせいなのでしょうね…。
本殿覆屋は近年になって新しくされたのでしょうか、しっかりしたものが建てられていました。
そして両開きの格子戸にはガラスが張られており、中央の部分には大きめの真新しい真鍮の南京錠が掛けられています。
「もしかして!」
南京錠が掛けられているということは、なにか大切なものが安置されているのではと思った私。
スマートフォンのライトを点けて本殿の中を見てみようとしましたが、明かりがガラスに反射して何も見えませんw
次にスマートフォンを写真モードにしてガラスに接近させてみると、そこにはたしかに肥前狛犬ちゃんの姿が確認できました。
アングルが変えられないので同じようなカットになってしまいましたが、けっこう自分では満足に撮れたと思います。
どうでしょう。綺麗ですよね?可愛いですよね?
やっぱり建屋内で管理されている肥前狛犬は、長い年月を重ねていても風化の進行は少ないように感じます。
□□□の□□□は神殿が石祠で造られ、武人姿の神像が祀られている。石祠の形式は市内でも古式に属し、十七世紀初頭の造立と推測される。
多久市民俗歴史資料館発行「多久の肥前狛犬」より抜粋
石祠の両側に奉納されている肥前狛犬は正面から見ると胴部が正方形で四肢などの加工を一切省いた単調な造りではあるが、顔部の細工は肥前狛犬のユニークを充分に補っている。両像とも口は開いたように見え、阿吽像の判断はできない。
右の像は内耳が前を向いた両耳の間の頭頂部が窪み、その中央に小さな突起を持ち角の名残を留めている。左の像は突起を持たない。両像ともたて髪は素毛である。目は杏仁形で眼球の回りに沈線を廻らし、目と目の間から鼻根がやや開き気味に広がる。目の下から三本の沈線が放射状に延び、髭か皺を表している。口はやや幅広の横線を彫り両像とも開いたように見える。顎から下の前肢部は平坦で直立し、脚は造り出していない。側面から見ると苔が付いている部分が少し膨らみを持っている。背は丸みを持ち、後頭部から七本の沈線が放射状に刻まれている。尾は背の地着部に小さな団子状の突起を持つ。
左の像がやや大きめで全体的な造りは右の像とほとんど同じであるが、足先を内側に引いていることから幾分前のめりになっていることや、背が直線的であることなどが異なる。
この肥前狛犬の製作時期は、□□石祠が造立されたのと同時期の十七世紀初頭と考えている。
平成23年に発行された「多久市の肥前狛犬」によると、どうやらこの資料が造られたころは肥前狛犬は石祠の前に安置されていたようです。
おそらく、肥前狛犬の盗難の話題が広まったことで本殿に覆屋を作り、しっかり施錠ができる状態にしてそこに安置されるようになったのでしょう。
それからしてみると、それまで野ざらしだった狛犬さんとは思えないほど綺麗な肥前ちゃんです。
末社。「大神宮」と「天満宮」。
今日は、参拝者の目に触れることもなく静かにご神体を守護する肥前狛犬をご紹介しました。
できたら明るい太陽の日差しの下でゆっくりとしてもらいたいものですが、なかなかそれは難しそうですね。
これからも地域の皆さんに大事にしてもらいなさいね(^^♪
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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